ニーズや市場の変化が激しい現代において、DXへの取り組みは企業が今後も永く事業を続けていくうえで避けては通れません。

一方で国内企業のDX推進は思うように進んでおらず、今後もこの状況が続けば、年間最大12兆円もの負債が発生するとのデータも発表されています。DXは国内企業にとって急務であり、日本全体の課題でもあるのです。

本記事ではDXの重要性やDXスキルをもつ人材の必要性、DX人材を確保する方法、DXの進め方、理想のDXを実現させるためにするべきことなど、DXに関する情報を網羅的にまとめました。
また、DXが思うように進んでいない大きな理由のひとつは、DX人材の不足にあります。DX人材を求めている企業や、すでにDX人材として活躍し、より良い環境を求めている方に向けて、DX専門の求人紹介サービス「Resource Cloud HR」を紹介します。将来的にDX人材として活躍したいと考えている方も、ぜひご活用ください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DXの意義

DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)とは、最新のIT技術の活用により、組織の価値向上や課題解決を図るだけでなく、人々の生活までよりよくする変革を指します。

DXはもともと、2004年にスウェーデンの大学教授エリック・ストルターマンが提唱した「進化し続けるテクノロジーで、人々の生活を豊かにしていく」という概念から生まれたものです。

DXの代表例としては、かつて書籍の販売は実店舗で対面にて行うことが当たり前だった時代に、インターネット通販を始めたAmazonの取り組みが挙げられます。当初は懐疑的な目を向けられていたにもかかわらず、今なお圧倒的な競争優位性を確立しています。

国内におけるDXの課題

国内においては経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」のなかで、企業が早急にDX推進に取り組まなければ2025年以降、年間最大12兆円の損失が生まれるという「2025年の崖」問題を提起したことでDXが注目されるようになりました。

また、当時公表された経済産業省の「『DX推進指標』とそのガイドライン」には、日本企業に対するIT関連の課題と対策がまとめられており、国内企業のDX推進のきっかけとなりました。

一方で、国内企業のDX推進は、他国と比べ遅れを取っているというデータがあります。「世界デジタル競争力ランキング2021」では日本は64カ国・地域のうち28位であり、先進国のなかでも特にデジタル分野で遅れているといえます。

その原因には既存システムの老朽化や、経営層がDXの本質を理解しておらず、ビジョンが明確でないことなどが挙げられるでしょう。なかでももっとも大きな問題のひとつが、DXを推進できる人材の不足です。DXを推進するにはDXスキルをもつDX人材が必要であり、優秀な人材を多くの企業が奪い合っているのが現状です。

DXへの取り組みの遅れ、優秀な人材の不足は日本全体の課題といえます。さらには今後も企業が新たなニーズに対応し、事業を続けていくためにはDXの推進が不可欠です。DX人材を確保し、正しくDXを推進することが今の企業には求められています。

DXの定義や「2025年の崖」問題、現状の課題に関しては、以下の記事で詳しく述べています。>>『DXとは? 定義をわかりやすく解説! 事例やDX人材をめざす人向けの情報も紹介

DX人材とは

DX人材の不足は深刻な問題

前述のとおり、DXの推進にはDX人材が欠かせません。DX人材とはエンジニアやプログラマのような特定のIT技術をもつだけでなく、DXを正しく理解したうえでデジタルスキルを活用し、課題解決へと導く人材を指します。

しかしDX人材は希少であり、上場企業1,000社を対象にしたアンケートでは「DX人材の不足を感じている企業は8〜9割」との結果を示しました。DX人材の不足こそが国内企業のDXが思うように推進できていない大きな原因であり、国が抱える課題のひとつといえます。

DX人材はデータサイエンティストやUXデザイナーなど、さまざまな職種を総称した呼び方です。DX人材を確保する際には、自社に必要な職種を明確に定めておく必要があります。

DX人材はデジタル化やDXを進めて終わりではなく、DXを推進させた先の事業変革まで行う役割まで求められます。DXの推進自体、少なくとも3〜5年かかるのが一般的です。さらに現在の事業や業界が、数年後・数十年後にどうなっているのか、どのような施策が必要なのか、広い視野でデジタル・ビジネス両面からアプローチする必要があります。

DX人材を確保する方法・目指すには

現状、優秀なDX人材は希少ですが、確保する方法としては採用活動以外にも、自社で育成する方法もあります。詳しくは後述しますが、それぞれにポイントやメリット・デメリットがあるので、自社に合った方法を選びましょう。

特に優秀なDX人材は多くの企業が渇望しており、今後もDX人材の不足は続くと予想されます。今のうちにDXやITのスキルを身につけ、必要な経験を積むことで、将来的にDX人材として活躍できる可能性は大いにあるでしょう。

例えば、Web未経験であればIT技能を身につけたり、Web業界からの転身であれば製品開発やWebサービス設計の経験を積んだりすると、DX人材としての強みになります。

以下の記事では、DX人材の職種ごとの役割やDX人材になるための道筋、また、DX人材を求めている企業向けの採用・育成の方法など、DX人材に関する情報を包括的にまとめています。DX人材を探している事業者や、DX人材を目指そうとしている方はぜひご覧ください。
>>『DX人材とは? 定義や採用・育成のポイントを解説

優秀な人材を確保するには採用DXを進めよう

採用DXとは

優秀な人材を採用活動により確保するなら、採用活動自体をDXにより効率化する方法があります。例えば、採用には「認知」「応募」「選考・内定」「入社・活躍」というプロセスがあります。

各フェーズをただオンライン化するだけでは、オンライン説明会での手応えが感じられなかったり、採用活動が始まっても応募者の志望度が判断しづらかったりするでしょう。結果としてミスマッチが起きやすく、早期退職といった人材流出につながりやすくなります。

採用活動を単なるデジタル化ではなくDXとして進めると、応募者のデータを蓄積・分析することで攻めの採用活動であるダイレクトリクルーティングを実現できます。また、データ分析により定まった伝えるべき企業の魅力を、適切かつ的確に伝えられれば、ブランド価値の向上も見込めるでしょう。

ほかにも、業務効率化により採用担当者の負担を軽減することで人的コストを削減、さらには採用力が強化されれば求人媒体やエージェントに頼らない採用活動が実現し、採用コストの削減も目指せます。

採用DXを成功させるには

採用DXを成功させるポイントとしては、CX(Candidate Experience:候補者体験)・EX(Employee Experience:従業員体験)の向上が重要です。CXとは採用候補者が企業のことを認知し、採用されるまでの一連の行動のことです。一方でEXは、従業員がその企業で働く期間におけるすべての体験を指します。

つまりCXの向上により採用活動自体でファンを獲得し、EXの向上により従業員の満足を高めることで、応募者にとって組織がより魅力的に映ることを目指します。結果として応募者が増えると、その分優秀な人材の応募も増えるでしょう。

また、EXの向上は従業員の定着率の強化にも直結します。CX・EXの向上を実現し、企業の成長や優秀な応募者の確保、既存の従業員の満足度を高めるには、社内DXや採用DXの推進が効果的なのです。

下の記事では、CX・EXをさらに深堀りし、具体的な推進の方法や手順、効果的な採用ツールなども紹介しています。採用活動の効率化やより良い人材の確保は、多くの企業にとっての課題です。採用DXを学んで、企業活動をよりいっそうアップデートしましょう。
>>『採用DXとは? メリット・デメリット、注意点、事例も紹介!

既存の社員をDX人材として育成する方法

DX人材は社内で育成できる?

DX人材の確保は通常の採用活動以外にも、見込みある既存の社員をDX人材として育成する方法もあります。DXスキルをもつ人材は希少なため、通常の採用活動で確保するよりも着実に確保しやすい方法といえるでしょう。

また、自社のことを熟知した人材がDX推進に関わることで、自社に合った推進方法を的確に選べたり、現場からの反発が起きづらかったりするメリットがあります。

DXは社内の業務プロセスや組織風土まで一変する場合があるため、自社の考え方をよく知り、現場からも信頼の厚い人物に任せられると、変革もスムーズに行えるでしょう。

DX人材を育成する方法

DX人材育成には研修を用いる方法や、OJTでの訓練などが挙げられます。また、前述のとおりDX人材にはITスキルだけでなくビジネスの視点が求められるため、多角的な視点で育成する必要があります。

加えて、DX・IT分野は変化が激しく、知識を常にアップデートしなければなりません。最新の情報や技術をいつでも取り入れられるよう、企業側が環境を常に整備する必要があります。

DX人材を自社で育成する場合、通常の採用よりも費用を抑えられる代わりに、時間がかかるデメリットがあります。

また、DX人材の育成ノウハウがないため社内育成は難しいと考えるなら、次項で解説するDX研修を導入する方法が効果的です。採用も含めそれぞれの特徴を踏まえたうえで、自社に合った確保の方法を選ぶ必要があります。

DX人材にはビジネスデザイナーやAIエンジニアをはじめ、さまざまな職種があります。自社にはどういった人材が必要で、どのような変革を求めているのか明確にし、確保すべき職種と適した人材配置、それぞれに合わせた育成方針を定めましょう。

以下の記事では、より具体的な育成の方法やポイント、注意点、代表的な6つの職種別の育成方法などを解説しています。
>>『DX人材の育成方法を解説! 採用をせずにDX人材を確保するには

DX人材育成にはDX研修が効果的

DX研修が効果的な理由

DX人材を社員育成によって確保したいと考えていても、ノウハウがなければ適切な育成ができるか不安に感じることでしょう。DX研修はさまざまな企業が実施しており、オンラインで完結するものや派遣型のものまで、サービス内容や料金体系もさまざまです。

また、DX研修は社員全体に対して、DXの目的や価値を伝えられる強みがあります。DXは担当者や上層部だけでなく、社員全員が変化に積極的にならなければ、十分とはいえません。

変革に対する反発や混乱を防ぐためにも、全社的にITリテラシーを高めて理解をうながす必要があり、その手段としてDX研修が有効です。

DX研修の選び方

DX研修会社を選ぶ際には、研修を通じてDX人材として活躍できそうか、難易度は適切かといった点に注目しましょう。

全体向けにはオンライン視聴型の研修、特定の役職を目指す人材に対してはワークショップ形式の研修というように、必要に応じてサービスを使い分けることも重要です。

自社である程度まかなう場合は、組織の内情や実務に合わせた実践的な内容に仕上げられる強みがあります。最初はノウハウがなかったとしても、研修を繰り返すことで精度が高まり、より効果的な研修ができるようになるでしょう。

予算と相談しながらできる範囲は自社でまかない、部分的に外部サービスを活用する方法も良いでしょう。コストをかけられるなら、自社に合わせた独自の研修構築まで請け負う企業もあります。自社のニーズに合わせて適切なサービスを選びましょう。

下記の記事では代表的なDX研修サービスや、DX研修の効果を高めるために自社でできる取り組みなどを紹介しています。
>>『DXの研修とは?内容や実施する方法、研修サービスについて解説

DX人材に必要なスキル・資格とは?

DX人材に資格は必要?

DX人材の育成やスキル向上を目指すなら、DX関連資格の取得をうながすこともひとつの手段です。

DX人材にとって資格取得は必須ではありませんが、資格取得に励むことで知識やスキルは蓄積されます。特に、実務をともなう試験の場合、取得後にすぐさま実践に活かせることもあるでしょう。

DX関連資格のなかでも、職種を問わずDXの基礎が学べるものや、ITストラテジスト・プロジェクトマネージャーといった特定のスキル証明に役立つものまでさまざまなものがあります。

なかには国家資格もあり、難易度は資格によって大きく異なります。まずは目標とする職種や求めるスキルを明確にし、取得する資格を検討しましょう。

社員にDX関連資格取得をうながすなら

企業が育成目的で資格取得をうながす場合は、資格取得関連の制度の整備や、資格取得対象者を明確にすることを重視しましょう。

資格取得関連制度の整備は、資格取得にかかる費用を会社負担にしたり、取得者に対してインセンティブを与えたり、といったものが効果的です。また、多くの社員を対象にするのではなく、DX人材として適正のある人物や関心の高い人物を選別して、取得をうながすことも重要です。

DX人材は多いに越したことはありませんが、関心・適性のない者にも取得をうながすことは非効率といえます。DX人材への育成を目指した資格取得推進は、実践で活躍できるようにすることが目的です。成長が見込まれる人材を、事前に明確に定めることをおすすめします。

下記の記事では、その他企業側が社員に資格取得をうながす際の注意点や、職種別におすすめのDX資格を14種類紹介しています。個人で取得する方法にも触れているので、DXスキル向上をめざしているDX人材や、これからDX人材を目指している方もぜひ参考にしてください。
>>『DX人材に必要な資格とは? 職種ごとにおすすめの資格を解説!

DXエンジニアとは?

DXエンジニアの定義

DXエンジニアは、エンジニアのなかでもDX推進スキルをもつエンジニアを指します。主な業務内容としては、DXプロジェクトの戦略立案からDX推進の実行、DX運用体制の構築まで、DXに関わる工程を幅広く扱います。

求められる水準も非常に高く、通常のエンジニアとしてのスキルやIT全般の知識に加え、データ活用やUI・UX、プロジェクトマネジメントのスキルなども必要です。

DX人材やデジタル人材が不足している現状において、当然DXエンジニアも供給が足りておらず、今後もDXエンジニアは業界を問わずあらゆる企業から求められるでしょう。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が発表した「IT人材白書2020」によると、年収面においてもDXエンジニアと一般的なエンジニアでは大きく異なり、DXエンジニアの需要の高さを表しているといえます。

DXエンジニアを確保するには

すでにエンジニアとして働いている人材なら、ビジネスの視点やAI・データ活用のスキルを身につけることで、DXエンジニアとしての道が拓けます。

企業が既存社員をDXエンジニアとして育てる場合にも、ITスキルをもっている従業員や見込みある優秀な社員を育成することで、DXエンジニアとして活躍できる可能性は大いにあるでしょう。

DXエンジニアを採用する場合には、育成に費用・時間をかけることなく即戦力を確保でき、スムーズにDXを進められます。

ただし、DXエンジニアは流動性が高い傾向にあり、組織に長く定着しない可能性もあります。定着させるためには、魅力ある待遇や成長できる環境を提供し続けるといった取り組みが必要です。

下の記事ではDXエンジニアを育成・採用する際の、それぞれのポイントとメリット・デメリットを深堀りしました。さらには、DXエンジニアを目指す方法、将来性や年収についても詳しく解説しています。

>>『DXエンジニアとは? 必要な資格・育成方法・採用方法・転職方法について紹介

デジタル人材とDX人材の違い

デジタル人材の需要も高まっている

デジタル人材とはAIやIoT、ビッグデータなど最先端技術の活用により、組織を成長に導く人材を指します。

DXをはじめとする企業のイノベーションには、顧客や自社のビジネスモデル・プロセスに対して新たな価値を提供する必要があり、そのためには最新テクノロジーの活用が欠かせません。

デジタル人材はIT人材やDX人材と混同されやすいですが、中小企業庁経済産業省の定義を参考にすると、以下のように考えられます。

  • IT人材

ITの運用を目的とし、IT活用、情報システムの導入を企画・推進・運営する人材

  • デジタル人材

最先端のデジタル技術の活用により、組織に対して新たな価値を生み出す人材

  • DX人材

最新テクノロジーを活用することで、企業や社会、市場に変革をもたらす人材

デジタル人材はDX人材と同様、DX推進に求められる職種であり、今後ますます需要が高まるでしょう。特に2025年の崖が近づく今、DXにまだ着手できていない企業には不可欠な存在といえます。

デジタル人材の現状

デジタル人材はプログラミングスキルやデータ分析、UI・UX志向といったハードスキル以外にも、課題解決力・論理的思考力・コミュニケーション能力といったソフトスキルも求められます。

DX人材、DXエンジニアと同じく求められるスキルが高い分、優秀な人材は希少であり、多くの企業が渇望しているのが現状です。また、DXエンジニアは海外志向や上昇志向の強い人材が多く、定着率の低さも課題となっています。

こちらの記事では、デジタル人材の定着率を高めるための採用戦略や、育成のポイントを企業の事例とともに紹介しています。また、デジタル人材を目指す方向けに身につけるべきスキルや、転職する方法についても詳しくまとめました。
>>『デジタル人材とは? 採用・育成の方法、必要とされている理由を紹介!

DXを推進するためには?

企業にとってDX推進が不可欠である理由

DX人材を確保できたら、DX推進を実行に移しましょう。DX推進は、ニーズの変化や2025年の崖への対応・対策として必要であると述べました。

また、今後深刻化するであろう労働人口の減少に対しても、DX推進により人の手で行っていた業務を自動化・効率化することで対策が見込めます。業務効率化により作業時間を短縮することで、人件費・残業代が削減できます。単純作業の自動化によりヒューマンエラーを防ぎ、クリエイティブな業務に充てる時間も増やせるでしょう。結果として、生産性の向上も見込めます。

さらにDX推進は、不測の事態が起きた際にも事業を継続させるための計画である、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の充実にもつながります。実際に、早くからDXに取り組んでいた企業は、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令された際にも、スムーズにテレワークに移行できました。

これらの観点から、企業にとってDXは今後も永く事業を続けるためには不可欠な取り組みといえます。

DX推進における課題・ステップ

一方で、多くの企業が老朽化した基幹システムを利用しており、長年データを蓄積してきたことでシステムが複雑化・ブラックボックス化している問題があります。そのような状況では大規模にビジネスモデルを変革しても、システムがついてこられず理想とするDXの実現は難しいでしょう。

システム導入時に担当していたエンジニアがすでに引退しており、社内で対処できないケースが多いことも、課題のひとつです。DX推進時にはシステムの調査・見直しが必要となることも想定しておきましょう。

DXを推進するには、大きく分けて以下のステップを踏みましょう。

①DXの目的・戦略を明確にする

②DX推進体制・システムを構築

③DX計画の立案・実施・改善

それぞれのプロセスについては、以下の記事で詳しく解説しています。こちらではDXを成功させるためのポイントや、DX推進に役立つ具体的なツールも紹介します。

>>『DXを推進するために必要なものやステップを紹介!

DX化とは?実現する方法

DX化とIT化の違い

DX化は主に「DXの推進に成功し、変革した状態」の意味で使われる言葉です。

混同されやすいものにIT化が挙げられますが、IT化は従来のアナログ作業をデジタルに転換することを主な目的としています。一方で、DX化はデジタル技術の活用により、ビジネスモデルや事業自体を変革することが目的です。

IT化は業務やビジネスプロセスの効率化に過ぎませんが、DX化はその先の価値創造まで目指す点が異なります。つまり、DX化を進めるうえでIT化は必要な過程であり、DX化を目的とした場合、IT化は手段にあたります。

採用活動を例に挙げると、人事担当者が行っていたエントリーシートの確認や面接日程調整をAIに任せ、業務効率化や人員コストの削減を図ることはIT化です。その先に応募者データを蓄積し、自社が求める人材へのダイレクトリクルーティングに活かすような施策を実行することがDX化といえます。

DX化を実現するポイント

DX化を実現するポイントとしては、経営層が会社全体を巻き込んで推し進める必要があることや、自社に合った適切なシステム・ツールを選定し、導入することなどが挙げられます。

特に、DXは担当者や担当部署に任せっきりといった企業も見られますが、経営層がDXの価値や目的を理解し、全社的な取り組みとして推し進めることが重要です。DXには大規模な投資や、経営戦略・ビジネスモデル全体の見直しが必要となる場合があるからです。

まずは経営トップ層が一丸となって、DX化によるビジョンを明確に示し、現場社員まで理解してもらい、全社員の協力のもとDXに取り組むことを意識しなければなりません。

下の記事では、中小企業から大企業、自治体まで幅広くDX化の成功事例を紹介し、DX化のメリットや企業が抱える課題を解説しています。
>>『DX化とは? IT化・業務のデジタル化との違いや企業の事例も紹介

DX戦略が必要な理由

DX戦略とは

DX戦略とは、DXを実現するための具体的な道筋のことです。DXは通常の単発のプロジェクトと異なり、長期目線で全社的に取り組まなければなりません。

単なるIT化・デジタル化で終わらせないよう、またDXが手段でなく目的になってしまわないように、DXによる明確な目標と道筋を定める必要があります。

また、DXによりニーズの変化に的確に対応するためにも、市場の動向・課題を分析し、前もって綿密な戦略を立てることが効果的な変革につながります。

DX戦略を策定する手順

DX戦略を策定するなら、以下のプロセスを意識しましょう。

①DX戦略のビジョン・目標を明確にする

②自社のリソースと課題を把握する

③スモールスタートを意識する

④ブラッシュアップして改善を繰り返す

まずはDXにおけるビジョン・目標を明確にするところから始まり、どのようなビジネスモデル・新事業を実現するのか、方向性とシナリオを定めることが必要です。

そのうえで障壁となりそうな現状の課題を洗い出し、可視化してビジョンとの乖離を埋める方法を考えます。そうすることでDXで取り組むべき内容や、道筋も見えてくるでしょう。

ビジョンとプロセスが明確にイメージできるようになれば、実際にDXに着手します。その際、即効性があり小さな変化を実感できるものから、長期的に、また着実に進めることを推奨します。

スモールスタートから始めることで急激な変化による混乱が起きづらく、即効性があればDXのメリットを感じられ、現場も前向きにDXに取り組めるでしょう。また、定期的に戦略自体を見直し、必要があれば改善を行うことも重要です。

下の記事では、より詳しいDX戦略立案のポイントやDX戦略を実現するために意識すべきこと、DX戦略の事例などを紹介しています。効果的、かつ効率的にDXを推し進めるには、DX戦略への理解も深めておきましょう。
>>『DX戦略とは?必要な理由と成功させるためのポイントを紹介!

DXプロジェクトを成功に導くには?

DXプロジェクトを進める方法

DXを成功させるには、DXを大きなひとつのプロジェクトとしてとらえ、計画・遂行することも重要です。DXを目的ではなく手段と考えて、プロジェクトの遂行によって市場や社会の課題を解決し、人々の生活に新たな価値を生み出すことを目標に据えましょう。

プロジェクトの進行には「ウォーターフォール型」と「アジャイル開発型」の2種類が挙げられます。ウォーターフォール型は最初に設計図を書き上げ、完成まで導く方法です。アジャイル開発型は短期間ごとにプログラムを組み立て、素早い改善を繰り返すことで最適なアプローチを導く、仮説検証型の手法です。

従来のプロジェクトでは、ウォーターフォール型による進め方が多く見られましたが、両者ともに向き・不向きがあります。DXプロジェクトのような見通しが立てづらい案件の場合は、必要に応じて進め方を決めると良いでしょう。

DXプロジェクトの遂行が難しい理由

DXプロジェクトは組織の変革や新たな価値の創造が目的であり、ゴールが見えづらい問題があります。

手探りでプロジェクトを始め、検証・改善を繰り返す必要があり、さらには長期的に取り組むうちに、市場の環境や顧客のニーズが大きく変わる可能性もあるでしょう。その際には戦略にとらわれず、柔軟な対応力も求められます。

また、チームメンバーが誰も使いこなせないような、新たな技術を活用しなければならない場合もあります。プロジェクトとして導入するならまずはプロジェクトメンバーが使いこなし、現場への教育まで行う必要もあるでしょう。

未知のプロジェクトとなりかねないため、思わぬトラブルが起こることも想定し、地道に推し進める必要があります。

DXプロジェクトに関してはプロジェクトの進捗を管理・可視化し、共有することに特化したプロジェクト管理ツール、一連の業務の流れを電子化・管理することに長けたワークフローシステムの活用などが効果的です。

下の記事ではDXプロジェクトに有効な具体的なサービスの紹介や、DXをプロジェクトとして進める際の詳細なステップ、DX銘柄にも選ばれたDXプロジェクトの事例などを解説しています。
>>『DXプロジェクトとは?成功に導くポイントを解説!

DX銘柄とは?

DX銘柄について

DX銘柄は東京証券取引所に上場している企業のなかで、DX推進に取り組み、優れた成果を示した企業を紹介するものです。経済産業省や東京証券取引所などの機関により選定され、国内企業のDX推進を後押しする目的で、毎年行われています。

DX銘柄のなかでも特に優れた取り組みを行った企業を「DXグランプリ」、DX銘柄には選ばれなかったものの、注目すべき取り組みを行なった企業を「DX注目企業」として発表します。2022年はDXグランプリに2社、DX銘柄31社、DX注目企業に15社が選ばれました。

DX銘柄に選ばれるメリット・ポイント

DX銘柄に選ばれる大きなメリットは、政府からDXへの取り組みを認められているとアピールできる点です。

今後ますます必要となるであろうIT技術活用やニーズの変化に合わせた組織変革など、先進的な取り組みをしていることが証明できます。さらには競争力の高さも示せるため、株式市場での注目も集まります。

顧客・取引先以外にも株主や投資家など、あらゆるステークホルダーに対する価値向上が見込まれるでしょう。

DX銘柄選定は、選択式回答と財務指標によるスコアリングからなる一次評価、記述式回答により審査される二次評価、最終選考という流れで行われます。

一部の例を挙げると、一次評価では以下のような項目が評価対象です。

  • ビジョン・ビジネスモデルがデジタル技術の発展にともなう社会の変化に対応したものであること
  • その実現のための戦略立案や組織・制度作りが適切であること
  • ガバナンスへの取り組みが行われていること など

また、二次評価の審査項目には、以下のものが挙げられます。

  • 経営ビジョンのひとつの柱に、IT戦略を掲げていること
  • あらゆる組織やデジタル技術との連携により、革新的な価値を提供していること
  • 経営者自らがコミットし、取り組みを社内外のステークホルダーに発信していること など

最終選考では一次評価・二次評価の結果を踏まえて、委員会により審議されます。

こちらの記事では、DX銘柄に選ばれるためのポイントをより深く解説し、2022年のDXグランプリに選ばれた中外製薬株式会社・日本瓦斯株式会社の取り組みもまとめました。DX銘柄に選ばれた企業も一覧にしているので、興味のある方はぜひご覧ください。
>>『DX銘柄とは?2022年の選出企業やメリット・ポイントを紹介!

自治体もDXに取り組むべき

自治体DXとは

これまで企業のDXをメインに扱ってきましたが、デジタル化に遅れを取っている自治体こそ早急にDXを進める必要があります。

自治体DXとは、デジタル活用やデータ分析の活用によって行政サービスの改善・業務効率化を図ることです。地域の発展や利便性の向上を目指し、職員や住民にとって新たな価値を提供することが求められます。

特に過疎化が進んだ地域では、公共事業を実施するにしても、住民数に対してコストがかかりすぎてしまいます。公共サービスを維持していくためには最新技術の活用により、少ない人出で住民一人ひとりに合わせた行政サービスの提供を目指す必要があるでしょう。
デジタル庁総務省も自治体DXの必要性を説いており、政府が舵を切ってDXを推し進めようとしています。

自治体DXでするべきこと

自治体DXで行うべき代表的な取り組みには、非効率なアナログ業務のデジタル化が挙げられます。近年、民間企業では契約書や社内稟議など、デジタルに移行した会社が増えました。民間企業と比べると、デジタル化に対応できていない自治体は多い傾向にあります。

デジタル移行をすると必要な書類を探す際に1枚1枚確認する手間が省け、省スペース・省資源にもつながります。また、単純作業はツール活用により自動化することで、未着手業務に割ける時間も増えるでしょう。

労働人口の減少により、特に地方では自治体が行うべきサービスが遅れているのが実情です。それらに対応するためには既存業務を効率化し、リソースを確保しなければなりません。

政府は自治体がDXとして取り組むべき内容・事項を「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」にまとめています。そのなかには重点取組事項として、以下のような内容が掲げられています。

  • 自治体の情報システムの標準化・共通化
  • 行政手続のオンライン化
  • AI・RPAの利用促進 など

ほかの項目やそれぞれの詳細については、下記の記事にまとめました。こちらではDXの実現に成功した自治体の事例、自治体DXを進める方法と手順、自治体DXが進んだ先の展望なども紹介しています。
>>『自治体DXとは? 定義や推進方法、事例について紹介!

デジタイゼーションはDXの第一歩

デジタイゼーションとは?

デジタイゼーションは、特定のアナログ業務のデジタル化のことです。総務省は「既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること」と定義しています。

DXに取り組むならその第一歩であるデジタイゼーションから、スモールスタートで始めましょう。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 書類のデジタル化
  • ITデバイスの活用
  • 業務システムの導入
  • 会議のオンライン化
  • 承認印の電子印鑑化
  • デジタル広告への移行

デジタイゼーションを成功させるには?

デジタイゼーションを成功させるためには、優先順位を明確にすることや、現場の声を尊重することなどがポイントです。

まずは従業員がもっとも負担に感じている業務や、デジタル化することで大きな効果を見込める業務から着手するようにしましょう。優先順位を明確にして徐々にデジタル化を浸透させていくことで、組織全体のDXにつなげやすくなります。

ただし、大きな効果が見込めるといっても、作業の方法が急激に変わると現場が混乱し、反発を生む可能性があります。

デジタイゼーションにより導入したツールやシステムを毎日使うのは現場の従業員なので、作業の方法が変わるなら現場の意見を尊重し、負担に感じさせないことを意識しましょう。ツールを選ぶ際に現場の従業員に意見を求めることも重要です。

そのほかのポイントやデジタイゼーションの効果などは、下の記事で解説しています。これからDXに着手する事業者・担当者は、デジタイゼーションから着実に進めることを意識しましょう。

また、デジタイゼーションと合わせて、次項で解説するデジタライゼーションについても理解を深めましょう。
>>『デジタイゼーションはDXの第一歩!意味や定義・デジタライゼーションとの違いを解説

デジタライゼーションとは?

デジタライゼーションの意味・定義

デジタライゼーションは、総務省の定義では以下のように表されています。

「組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること」

つまり、ビジネスモデルや業務フロー全体をデジタル化し、業務効率化やコスト削減、さらには社外の関係者に対しても良い影響を与えることを指します。例えば、以下のような取り組みが考えられるでしょう。

  • 定型業務を自動化し、生産性を向上させる
  • 職人の技術をデータ化し、再現性を高める
  • 製品購入者に対して、オンラインでのフォロー体制を整える

デジタライゼーションはデジタイゼーションの次の段階であり、最終的にDXにつなげることが目的です。

デジタライゼーションのポイント

デジタライゼーションを効率的に進めるポイントとしては、デジタイゼーションも並行して進めることが挙げられます。

デジタイゼーションはデジタライゼーションの前段階と述べましたが、順序通り進めなければならない訳ではなく、並行して進めることもできます。優先順位の高い業務のデジタル化に着手しながら、フロー全体の変革を進めるといった、状況に合った効率の良い方法を選びましょう。

また、既存の便利なサービスを、柔軟に活用することも重要です。組織のデジタル化・最適化に関しては外部サービスが豊富にあり、企業規模や業種に合わせたツール・システム製品を選べます。

デジタル化を目指す場合、独自システムをゼロから構築する企業も見られますが、それは必須の取り組みではありません。効率良くDXにつなげるためにも、その前段階では必要に応じて柔軟に既存サービスを導入・活用しましょう。

こちらの記事では代表的なデジタライゼーションの例や、企業の導入事例などをまとめています。組織のDXを進めるためにはデジタイゼーション、デジタライゼーションと着手しやすい部分から始め、DX推進へとつなげましょう。
>>『デジタライゼーションとは?意味や定義、DX・デジタイゼーションとの違いを解説

DX人材として活躍したい方へ

DXがどのような仕事をしているのか気になっている方は、こちらのインタビュー記事もご覧ください。実際にDX人材として働くお二人に生の声を伺い、それぞれ現職に至った経緯や具体的に関わっているプロジェクトの内容、やりがい、苦労したこと、DX人材を目指す方へのアドバイスなどを記事にまとめています。

>>『DX人材インタビュー:コンサルタント
>>『DX人材インタビュー:シニアコンサルタント

また、後述するDX人材を目指す方向けに研修や勉強会、DX関連資格取得支援も行っているDX人材専門の求人紹介サービス「Resource Cloud HR」もぜひご活用ください。

事業を続けるためにはDXへの取り組みが不可欠

企業が今後も永く事業を続けるためには、ニーズの変化への対応やデジタル化による競争力強化が必須であり、そのためにはDXへの取り組みが不可欠です。また、2025年の崖からもわかるように、国内企業のDXへの遅れは日本全体の課題でもあります。

DXが思うように進んでいない代表的な理由のひとつは、DXスキルをもつ人材の不足にあります。特に日本はほかの先進国と比べ優秀なDX人材が足りておらず、通常の採用活動では確保が難しいのが現状です。

一方で、DX人材にとっては引っ張りだこのような状態が続いており、高い収入を得ながら求める環境で働けているという側面もあります。
DX人材を求める企業や、より良い環境を求めているDX人材にご活用いただきたいのが、DX人材専門の求人紹介サービス「Resource Cloud HR」です。

DX求人ならResource Cloud HR

Resource Cloud HRは業界では珍しい、DX人材に特化した求人紹介サービスです。企業向けのDXコンサルティング事業も行っているため、クライアントの現状を深く理解したうえで、具体的で正確な求人の紹介が可能です。また、採用代行事業も行っており、面接・採用までスムーズに承ります。

すでにDX人材として活躍している方への求人紹介だけでなく、これからDX人材をめざす方に向けた勉強会や研修、DX関連資格の取得サポートも実施しています。

エンジニア出身でコンサルティングスキルを身につけたい方、コンサルティング出身でDXスキル(デジタルスキル、エンジニアリングスキル)を身につけて、DX人材として活躍していきたい方もぜひご活用ください。

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