近年DXへの需要は急速に増していますが、DXは一朝一夕で推進できるものではありません。DXを進めるには、デジタイゼーションやデジタライゼーションといった段階を踏む必要があります。単なるデジタル化で終わらせないためにも、それぞれの工程で何をすべきか、考えてみましょう。
本記事ではデジタイゼーションの意義や効果、具体的な取り組みの事例、デジタイゼーションを成功させてDXへつなげるポイントを紹介します。
また、デジタイゼーションやDXを効果的に進めるには、DXスキルをもった人材が必要です。DX人材を求めている企業や、転職を検討しているDX人材に向けた、DX専門の求人紹介サービスも紹介します。
デジタイゼーションとは?
デジタイゼーションの概要と、混同されやすいデジタライゼーションやDXについても解説します。
デジタイゼーションとは?
デジタイゼーションとは、特定のアナログ業務のデジタル化のことです。総務省の定義によると、以下のように示されています。
「既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること」
具体例としては、以下の取り組みが代表的です。
- 紙ベースで行っていた営業日誌や顧客情報の管理をパソコンで行えるようにする
- 社内稟議や印鑑・契約書・請求書・納品書などの電子化
- オンライン会議システムの導入
このように業務の一部をデジタル化することで、後述するDXへとつなげる目的があります。また、デジタイゼーションとDXの間には、デジタライゼーションという工程も挟みます。
デジタライゼーションとは?
デジタライゼーションとは、業務プロセス全体をデジタル化することです。こちらも、総務省が示す定義を見てみましょう。
「組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること」
つまり、業務プロセスや経営戦略の変革により、生産性の向上や業務効率化だけでなく、関係者にとってもより良い影響を与えることを指します。
具体的には以下の取り組みが挙げられます。
- 作業用ロボットの活用による、人件費削減や生産性向上
- 職人の技術をデータ化し、再現性の向上や業務効率化を図る
- 問い合わせに対する対応品質を高めるために、AIチャットボットを導入
デジタイゼーションで特定の業務をデジタル化し、デジタライゼーションでフロー全体を変革したら、DXの実施に移りましょう。
デジタライゼーションについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
>>「デジタライゼーションとは?意味や定義、DX・デジタイゼーションとの違いを解説」
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは
DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)とは、IT技術の活用により新たな価値を生み出し、社会や人々の生活をより良くすることを指します。
総務省の定義では、以下のように示されています。
- 組織・文化を変革しながら、顧客や市場の急激な変化に対応する
- 最新技術の活用により、新たな製品・サービス・ビジネスモデルを生み出す
- ネット・リアルの両面から新たな顧客体験を生み出し、競争優位性を確立する
例えば、映画やドラマなどの新しい楽しみ方として、サブスクリプションによる視聴を推進したhuluや、個人間の中古販売をスマートフォンひとつで簡単に完結する仕組みを作ったメリカリなどがDXの代表的な事例です。
今後、企業はデジタイゼーションだけでなく、デジタライゼーションやDXを推進する必要があります。次項では、デジタイゼーションやDXの意義と重要性を解説します。
DXについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
>>「DXとは? 定義をわかりやすく解説! 事例やDX人材をめざす人向けの情報も紹介」
(参照:総務省『デジタル・トランスフォーメーションの定義』)
デジタイゼーションの意義と取り組むべき理由
デジタイゼーションやその他の類語を理解したうえで、デジタイゼーションに取り組む意義を見ていきましょう。デジタライゼーションを行うべき主な理由には「2025年の崖」という問題への対策と、競争優位性の獲得の2点が挙げられます。
「2025の崖」への懸念
DXが注目されるようになった理由のひとつに、2019年に経済産業省により発表された「DXレポート」があります。DXレポートでは、2025年までに国内企業のDXが進まなかった場合、年間最大12兆円の損失が発生するとの問題を提示しました。
理由としては、以下のものが挙げられます。
- 多くの企業で既存システムが老朽化し、市場の変化に対応できない
- 保守できる人材不足により、システムの維持管理費が高額化
- システム老朽化・保守人材不足によりシステムトラブルやデータ喪失のリスクが高まる
2025年を目処にそういった事態が国内全体で起こり、国の経済をも揺るがす事態になると懸念されています。そして、企業がDXを進めるための第一歩が、デジタイゼーションなのです。(参照:経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』)
競争優位性を獲得
近年オンラインの需要が高まり、市場のニーズは急激に変化しています。そのようななか、デジタル化が進んでいない企業は変化に対応できず、淘汰されてしまうリスクがあります。
一方で、今後も新たな需要に的確に対応し、価値を提供し続けていれば、市場優位性を獲得できるでしょう。競合他社から遅れを取らないようDXに取り組む必要があり、まずはデジタイゼーションへの着手が求められています。
デジタイゼーションの具体例・事例
デジタイゼーションに取り組む場合に、何から着手して良いのか悩んでしまう事業者が多いことも事実です。本項では実際に高い効果が期待される取り組みとして、6つの具体例を紹介します。
一気にすべて取り組む必要はなく、効果が見込めそうなものや、自社の課題に合ったものから着手すると良いでしょう。
- 書類のデジタル化
- ITデバイスの活用
- 業務システムの導入
- 会議のオンライン化
- 承認印の電子印鑑化
- デジタル広告への移行
書類のデジタル化
代表的な例が書類のデジタル化です。報告書や稟議書・パンフレット・議事録・営業記録・カタログなど、社内には大量の紙データがあります。それらをデジタル化してクラウド上で保管するだけでも共有の手間が省け、コスト削減にもつながります。過去の記録を遡る際にも検索だけで探せるので、紙のように一枚一枚調べる必要もなくなるでしょう。
ITデバイスの活用
ペーパーレス化した電子データの閲覧や営業先でのプレゼンテーションなどで、スマートフォンやタブレットを活用することも、デジタイゼーションのひとつです。特に、一度事務所に帰らないとできなかった仕事を出先でも対応できるようにすると、大幅に無駄な時間を削減できるでしょう。
業務システムの導入
業務システムツールの導入も、社内のデジタル化を加速させます。営業記録の作成・保管や経費申請、勤怠管理など、簡単にパソコンで管理できるようになります。業界や目的別にあらゆるシステムが出回っているので、社内のニーズや課題に合わせて導入を検討すると良いでしょう。
会議のオンライン化
コロナ禍以降、オンライン会議を導入する企業は急増しました。遠隔にいる社員を交えた会議や、取引先との面談でどちらかが移動する必要がなくなることも、デジタイゼーションです。
日頃からオンライン会議に慣れておくと、大規模災害が起きた際の連絡手段にも役立ちます。また、資料の画面共有や動画を用いた状況の伝達も可能なため、メリットは多々あります。
承認印の電子印鑑化
社内稟議や報告書をデジタル化しても、承認や決済に押印が必要になると、結局印刷して共有しなければなりません。社内で使用する印鑑を電子印鑑化することで、書類のデジタル化の恩恵を十分に受けられ、業務効率化につながります。
デジタル広告への移行
チラシの配布やポスターの掲示による広告も、デジタル広告へと移行できます。具体的には、ダイレクトメールやWeb広告、デジタルサイネージの活用などが挙げられるでしょう。アナログ広告より明確にターゲットを絞れたり、広告効果をデータ化して今後に活かせたりと、デジタルならではのメリットを享受できます。
デジタイゼーションの効果
デジタイゼーションによって得られる主な効果は、以下のとおりです。
- 業務効率化
- コスト削減
- 人的ミスの低減
- DXにつながる
業務効率化
デジタイゼーションにより多くの業務の自動化や、作業にかかる時間短縮が見込めます。また、作業時間の短縮によりクリエイティブな仕事に時間を費やしたり、顧客満足度を高めるための時間に充てたりできます。結果として、生産性の向上にもつながるでしょう。
また、業務効率化は長時間労働の解消にも有効であり、今後深刻化するであろう労働人口不足への対策にもなります。
コスト削減
ペーパーレス化による紙資源コスト削減や、オンライン会議の導入による出張費用削減など、デジタイゼーションは経費削減につながります。また、業務効率化による残業時間の短縮は、従業員の負担を減らすと同時に、人件費の削減も見込めるでしょう。
人的ミスの低減
手入力といった作業において、人的ミスを確実になくすことはほぼ不可能です。また、ミスを防ぐためのダブルチェックや、ミスがあった場合の修正作業など、余計な時間もかかるでしょう。
入力作業やミスの発見を自動化することで、人的ミスの発生や防止にかかる時間を大幅に軽減できます。取引先や顧客に対するミスは、会社の信頼を大きく落としかねません。属人的な業務に頼るだけでなく、上手にデジタル技術も活用しましょう。
DXにつながる
デジタイゼーションはDX推進の第一歩です。負担になっている業務から徐々にデジタル化を進めることで、企業全体のDXにつなげやすくなります。
デジタイゼーションを成功させるためのポイント
デジタイゼーションに取り組むうえで、意識すべき主なポイントをまとめました。
- 優先順位を明確にする
- 組織として取り組む
- 現場の声を重視する
- 既存システムやサービスを活用する
- デジタルに精通した人材を確保する
順番に見ていきましょう。
優先順位を明確にする
まずはどの業務からデジタル化するのか、優先順位を明確にしましょう。従業員がもっとも負担を感じている業務や、デジタル化することでより大きな効果が見込まれる業務を洗い出します。
また、業務効率化が見込めるといっても、いきなり作業の方法が変わると従業員の反発を生む可能性があります。まずは効果の出やすいものからスモールスタートで始め、徐々にデジタル化を浸透させていくことが重要です。
組織として取り組む
デジタイゼーションは一部の部署だけで取り組んだり、上層部だけがやる気になって推し進めても、限定的な効果しか得られません。会社の方針としてデジタル化を推進するなら、全社的な取り組みとして進める必要があります。
現場の声を尊重する
デジタイゼーションによって導入したツールやシステムを毎日使うのは、現場の従業員です。作業の方法を変える際にも現場の意見を尊重し、業務を行いやすくすることを意識しましょう。ツールやシステムを選ぶ際にも、現場の従業員が使いやすそうか、意見を求めることも重要です。
既存システムやサービスを活用する
デジタル化を図る際、システムやツールを自社に合わせて作る場合もありますが、必ずしもそうしなければいけない訳ではありません。特に最近ではシステム・ツールが充実しており、既存の製品でも十分役立ちます。
デジタイゼーションはDXの第一歩であり、なるべくスピード感をもって取り組むべきです。システムやツールの設計やカスタマイズにあまり時間をかけずに、既存のサービスも上手に活用しながら、デジタル化を進めましょう。
デジタルに精通した人材を確保する
効率よくデジタライゼーションやDXを推し進めるなら、デジタルに精通したデジタル人材やDX人材と呼ばれる人材を確保しましょう。特に、単なるデジタル化で終わらせないためには、DXスキルをもったDX人材が不可欠です。
デジタル人材やDX人材については、次項で詳しく解説します。
デジタイゼーション、DX推進には適した人材が必要?
効果的なデジタイゼーションやDX推進をめざすなら、デジタル人材やDX人材と呼ばれる人材がいるとスムーズです。特にDXを目標に掲げるなら、DXスキルをもったDX人材の確保は欠かせません。
しかし優秀なDX人材は希少であり、採用は簡単ではありません。需要は年々増加しているにも関わらず供給が追いついていないことから、国内では各社が奪い合っているのが現状です。
本項では、DX人材を採用するためのポイントや、育成の方法、DX人材をめざす方法も紹介します。
DX人材を社内で育成する方法
DX人材の採用は容易ではありませんが、確保する方法として社内の見込みある人材を、DX人材として育成する方法があります。既存の社員をDX人材へ育成する際のポイントは、以下のとおりです。
- OJT
- 研修の実施
- 学習環境を整える
- 資格取得をサポート
- タレントマネジメントによる配置替え
会社としてできることは、DXスキルを身につけるために学習できる環境を整えたり、資格取得のサポートなどが挙げられます。また日々進化するIT技術を学び、身につけるためには、社内外の研修や、業務を通じてスキルを習得できる環境を提供することが望ましいでしょう。
DX人材の育成に関しては、こちらの記事もご覧ください。
>>「DX人材の育成方法を解説!採用をせずにDX人材を確保するには」
DX人材を採用するには
DX人材の採用は難しいといっても、通常の採用活動以外にも確保する手段はいくつか存在します。
- SNSを使った採用活動
- DX人材専門の求人紹介サービスの活用
- 従業員や関係者からの紹介(リファラル採用)
- 求職者への積極的なアプローチ(ダイレクトリクルーティング)
- 他社からのスカウトやアウトソーシング
優秀なデジタル人材の確保には、上記のような「攻めの募集」も重要です。これらは通常の採用活動よりもコストを抑えられるうえに、まだ転職への意志が薄い転職潜在層にもアプローチできる可能性があります。
ただし、せっかく採用につながっても、すぐに転職してしまっては元も子もありません。処遇の見直しや働きやすい環境づくりなどには、十分配慮することを推奨します。
デジタル人材の採用や育成については、こちらの記事でも解説しています。
>>「デジタル人材とは? 採用・育成の方法、必要とされている理由を紹介!」
DX人材になるためには
キャリアアップや転職を目標に、DX人材をめざしている方もいることでしょう。DXスキルを身につけるためには、以下の方法が考えられます。
- DX関連資格を取得する
- 実務で学ベル職場に転職する
- 本や研修により知識・スキルを身につける
仕事をしながら習得し、転職にも役立せたいなら、資格取得がおすすめです。おすすめのDX関連資格については、以下の記事にまとめています。めざす職種別に紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>>「DX人材に必要な資格とは? 職種ごとにおすすめの資格を解説!」
DXはデジタイゼーションから始まる
デジタイゼーションはDXへの第一歩であり、今後も事業を続けていくうえでは避けられません。デジタイゼーションには書類や承認印のデジタル化、業務システムの導入などが挙げられます。また、業務効率化やコスト削減、人的ミスの低減といった効果が見込めます。
しかし、単なるデジタル化で終わってしまうケースも多く、DXまでつなげるとなると、DXスキルをもった人材が必要です。DX人材の確保には社員の育成や戦略的な採用活動など、さまざまな方法があります。
また、需要と供給がマッチすることから、DX人材専門の求人紹介サービスの活用も効果的です。DX求人を探すなら、Resource Cloud HRをご活用ください。
DX求人ならResource Cloud HR

Resource Cloud HRは業界では珍しい、DXに特化した求人紹介サービスです。DXのコンサルティング事業も行っていることから、企業の現状を深く理解したうえで、的確で具体的な求人内容の紹介ができます。また、採用代行事業も行っており、面接・採用までスムーズなサポートが可能です。
Resource Cloud HRではコンサルティングスキルを身につけたいエンジニアや、DXスキル(デジタルスキル、エンジニアリングスキル)を身につけてDX人材として活躍したいコンサルタントに向けて、会員限定で定期的な研修や勉強会も実施しています。
DX関連資格の取得サポートも行っているので、将来的にDX人材をめざしている方もぜひお気軽にご相談ください。