デジタル技術に精通した人材は希少であり、現代の日本企業では今後ますますニーズの高まりが予想されます。しかし、採用できたとしてもデジタル人材は定着率が比較的低く、優秀な人材の確保は容易ではありません。

そこで本記事では、定着率を高めるためのデジタル人材の育成・採用の方法、企業によるデジタル人材育成の事例、デジタル人材に求められるスキルなどを紹介します。

デジタル人材を確保したい企業の担当者だけでなく、すでにデジタル人材として活躍しておりキャリアアップをめざす方や、未経験からデジタル人材として転職したい方にも、おすすめできるサービスを紹介します。ぜひ参考にしてください。

デジタル人材とは? 注目されている理由

まずはデジタル人材の定義や必要とされている理由・背景、混同されやすいIT人材・DX人材との違いから説明します。

デジタル人材とは

デジタル人材とは、最先端の技術を活用し、組織を成長に導く人材のことです。最先端の技術とは、IoT・AI・5G・ビッグデータ・RPAなど幅広いテクノロジーを対象とします。

企業のイノベーションには最先端技術の活用により、自社や顧客に対して新たな価値の提供が求められます。昨今、注目が集まっているDXを推進するためには、デジタル人材の確保が必要です。

ちなみにDXとは、IT技術の活用により企業の売上・利益を向上させるだけでなく、デジタル技術を普及させることで、社会や人々の暮らしをより良くする変革を指します。

詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

デジタル人材がDX推進に必要な理由と背景

DX推進にデジタル人材が必要な理由のひとつに、DXを推し進められる人材の不足が挙げられます。デジタル技術は日々進歩しているにも関わらず、労働人口の減少やベテラン技術者の高齢化も同時に進んでおり、ますます人材の確保が難しくなるでしょう。

株式会社NTTデータ経営研究所の「デジタル人材定着に向けたアンケート調査」によると、デジタル人材と呼べる人材は20~40代の社会人のなかでわずか1割程度であることがわかっています。さらには、デジタル人材のなかには海外志向や上昇志向の強い人材が多く、定着率の低さも課題です。

また、DX推進におけるデジタル人材の不足に関しては、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が上場企業1,000社を対象に行った、DXに関するアンケートも参考になります。

アンケートのなかで、デジタル分野に精通する人材への不足感を感じている企業は、全体の8~9割にのぼりました。

今後ますますDXに取り組む企業が増えることが予想されるなかで、デジタル人材の不足はより深刻化すると考えられます。(参照:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「これからの人材のスキル変革を考える ~DX時代を迎えて~」)

デジタル人材とIT人材・DX人材の違い

デジタル人材と混同されやすいIT人材・DX人材との違いを、中小企業庁経済産業省の定義を参考に比較しましょう。

  • IT人材

ITの活用や情報システムの導入を企画、推進、運用する人材

  • デジタル人材

最先端のデジタル技術を活用して、企業に対して新たな価値を提供できる人材

  • DX人材

デジタル技術の活用により、企業や社会に変革をもたらす人材

以上のように考えると、IT人材はITの運用を目的としていますが、デジタル人材はITを活用することで企業に新しい価値を生み出し、さらにDX人材はIT活用により社会や市場に変革をもたらす人材といえます。

デジタル人材に必要なスキルとは?

デジタル人材に求められる要件として、ハードスキルとソフトスキルの2つの面から考えてみましょう。

ハードスキル

ハードスキルとは、技術的な知識や能力のことです。具体的には以下のようなスキルが求められます。

  • プログラミングスキル
  • データ分析
  • データマネジメント
  • UI/UX志向

AIやIoTといった最新技術の知識はもちろん、データを適切に活用し管理するデータマネジメントスキルや、ユーザーの満足度に直結するUI/UX志向が重要です。

デジタル業界では常に新たなサービスや技術が生まれており、デジタル人材は最新技術を理解・習得し続けなければなりません。そのうえで、自社の課題にマッチした技術を活用し、解決に導く能力が必要です。

ソフトスキル

ソフトスキルとは、以下のような仕事の進め方や考え方、特性を指します。

  • 課題解決力
  • 論理的思考力
  • コミュニケーション能力

デジタル人材にはハードスキルが重要視されがちですが、上記のようなソフトスキルも求められます。理由としては、デジタル人材はDX推進において、プロジェクトマネージャーとしての役割を担うことがあるからです。

その場合、さまざまなスキルをもった人材を束ね、力を集約させなければなりません。また、業務にデジタル技術を取り入れるには、現場の要望や課題を正しく理解し、調整する必要があります。

それらを実現するためには、社内外の調整力や人を動かす能力などが必要であり、プロジェクトマネージャーとして活躍できるよう、ソフトスキルの習得が欠かせません。

デジタル人材を育成するためには?

デジタル人材は希少性が高く、優秀な人材の確保は簡単ではありませんが、社内で育成して確保する方法もあります。また、採用したデジタル人材を流出させないためにも、育成により「現職でまだまだスキルアップが見込める」と感じさせることも重要です。社内での育成方法は、以下の5つが考えられます。

  • OJT
  • 研修の実施
  • 学習環境を整える
  • 資格取得をサポート
  • タレントマネジメントによる配置替え

OJT

デジタル人材は新しいことを学ぼうとする上昇志向の強い人材が多いため、スキルアップにつながる業務を任せるのが効果的です。ソフト・ハード両方のスキルアップが実務を通して身につきます。

また、できる限り権限を与え、責任ある立場を任せることで、よりスピード感のあるスキルアップが見込めます。

研修の実施

デジタル人材の育成には、教育・研修の実践が有効です。すでに社内でOJTにより育ったデジタル人材がいれば、自社に合わせた内容の社内研修を任せると良いでしょう。いない場合は外部講師を招いたり、外部の研修を活用したりしましょう。常に情報をアップデートできる機会を提供するのが肝心です。

経済産業省の「マナビDX」では、助成金を受けながら企業の研修に活用できる学習コンテンツを掲載しています。公的機関による研修もご活用ください。

学習環境を整える

デジタル人材が自立して、学習できる環境を整えることも重要です。自主的に学習が進められるオンライン研修サービスの導入や、最新技術の情報共有の場を設けることなどが挙げられます。また、学習意欲が高くても学習時間が確保できなければ、スキルアップは見込めません。

仕事や自主的な学習、生活まで充実させるために、ワークライフバランスの取れた職場環境を整備することで、スキルアップだけでなく人材流出の防止にもつながります。

資格取得をサポート

学習機会の提供と同時に、資格取得のサポートも効果的です。例として、以下の資格が挙げられます。

  • ITコーディネーター
  • データスペシャリスト
  • 基本情報技術者試験
  • 統計士・データ解析士

資格取得にかかる費用面のサポートや、社内の有資格者との情報交換の場を設けるなどの施策が考えられます。また、資格手当といった待遇面での充実も実現できれば、なお良いでしょう。

タレントマネジメントによる配置転換

既存の従業員のなかにデジタル人材として活躍できる可能性がある者に、タレントマネジメントによる戦略的な配置転換・育成を検討するのも効果的です。

タレントマネジメントとは、従業員のもつスキルやノウハウを最大限活かすために、評価や待遇・処遇の見直し、異動・育成といった人事業務を、戦略的に実行していくことです。タレントマネジメントには育成以外にも、モチベーションや生産性の向上が期待できます。

デジタル人材育成の企業事例

実際にデジタル人材を社内で育成している例として、以下の3社の事例を紹介します。組織内部のスキル強化が十分に機能すれば、中長期的に見ても非常に効果的です。社内育成の導入を検討しているなら、ぜひ参考にしてください。

  • 旭化成株式会社
  • 日本郵船株式会社
  • 株式会社ベネッセホールディングス

旭化成株式会社

旭化成株式会社では2018年からDXを推進し、2021年には全社的なDX推進を目的にデジタル共創本部を設立しました。そして、次世代のリーダーを任せる可能性のある人材を事業部門からデジタル共創本部に参画させ、デジタルの能力を高めたあとに事業部門に戻り、キーマンとして活躍してもらう仕組みを構築しました。

また、2018年にはデジタルスキルを習得した社員を評価するために、独自の認定制度を設置。社内オリジナルの教育コンテンツを充実させ、2020年には学習のための環境も整えました。一人ひとりがデジタル分野での専門性を高め成長し続けることを目標に、現場の社員から経営層まで、全社員のデジタルスキル習得をめざしています。

さらには、同社が定めた認証制度を外部向けに公開し、製造業界全体のデジタルリテラシー向上まで見込んでいます。

日本郵船株式会社

日本郵船株式会社は「DX推進には人の育成が最重要」とし、課題に対してテクノロジーとデータを用いて解決できる社員育成のために、富士山型のデジタル人材育成の仕組みを構築しました。

具体的には、DX牽引リーダーを育成するプログラム「デジタルアカデミー」、データを実務面で活用するデータアナリストを育成する「データラボラトリー」を展開しています。

デジタルアカデミーでは、半年間のカリキュラムでデジタルリーダーを育成するために、座学から始まり、最終的には受講生がチームを組んで新事業案を経営陣に提案。ビジネスにつながる具体的な構想も、育成を通じて次々と生まれています。

データラボラトリーではデータアナリティクスやAI、統計・数理化学まで扱える人材育成に注力し、半年程度で100人以上が受講しました。参加者は自らの業務課題をラボラトリーに持ち込み、社内に属するデータサイエンティストとともに取り組むことで、データ分析やデータ統計などのスキルを身につけます。

さらには、受講者が社内報やメーマガジンで成果を共有し、社内のデジタル意識改革にもつなげています。

株式会社ベネッセホールディングス

株式会社ベネッセホールディングスはDXを推進するために、内部からの組織強化を重視しました。事業において、当たり前のようにデジタル技術を使いこなせるよう、社内変革・能力向上をめざしています。

2020年度に、ベネッセのDXに必要な6職種(「企画」「開発管理」「エンジニア」「デジタルマーケティン グ」「データ」「デザイン」)×3段階のレベル別(「見習いレベル」「自走レベル」「人に教えられるレベル」) と定義し、社員全員にアセスメントを実施。

一人ひとりのレベルを可視化しました。アセスメントにより、どの部門でどのくらいデジタル人材の人数・質が不足しているか、個人レベルで具体的に判断できます。

また、デジタルリテラシーの向上を目的に、社内の内容に合わせたオリジナルの教育コンテンツを作成し、経営層を含む管理職まで全社員を対象に研修を実施。他にも、外部のオンライン研修サービスの導入や推奨資格取得支援、インターンでの専門部門への参画など、自主的に学べる環境を整備。

上記6職種をめざす社員に対しては、早い段階でキャリアパスを示す取り組みも実施しています。
(出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)『DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材』)

デジタル人材の採用について

社内でのデジタル人材の育成は長い目で見て効果的ですが、ゼロからの仕組み構築には多大な時間と労力を要します。そこで、本項ではデジタル人材の採用について見ていきましょう。

前述のとおり、デジタル人材と呼べる20〜40代の人材は採用市場において1割程度といわれており、8〜9割の企業がデジタルに精通した人材の不足を感じています。さらに、デジタル人材の多くは転職によるスキルや報酬アップへの志向が強く、転職流動性が高いこともわかっています。

株式会社NTTデータ経営研究所のデジタル人材に対する調査では、7割のデジタル人材は転職を経験しており、また、1/3の人材は直近1年以内の転職を検討しているとの結果を示しました。

(出典:株式会社NTTデータ経営研究所『デジタル人材定着に向けたアンケート調査』)

デジタル人材は多職種に比べてニーズが高く、あらゆる業種の企業から求められています。供給が少なく流動性も高いことから、企業にとって優秀なデジタル人材の確保は容易ではありませんが、募集の際に意識すべき点も存在します。以下のポイントを押さえるように心がけましょう。

  • ワークライフバランスが取れる環境づくり
  • 教育体制を整備する
  • 処遇を見直す
  • 戦略的に多様な採用手法をとる
  • 綿密な採用戦略を立てる

ワークライフバランスが取れる環境づくり

株式会社NTTデータ経営研究所の「デジタル人材定着に向けたアンケート」において、デジタル人材の転職にはワークライフバランスを求める声が多く、仕事と生活の充実は定着率に大きく関わることが示されています。

仕事量が膨大で、生活の充実や自主的な学びの時間が取れない環境では、採用できても流出してしまう可能性が高いでしょう。募集の際には就業時間の目安や、フレックス制やリモートワークを導入していることなど、アピールできると良いでしょう。

教育体制を整備する

デジタル人材の転職理由はワークライフバランスを求める以外にも、スキルアップを求めるケースも多く見られます。デジタル人材は常に新たな情報や技術を身につける必要があり、上昇意欲の強い人材が多い傾向にあります。自社の教育体制を見直し、スキルアップできる環境が整備できていることをアピールしましょう。

処遇を見直す

高いスキルをもつデジタル人材は希少なため、給与が比較的高い傾向にあります。DX人材のスキルを評価する制度がない場合、社内評価制度を見直し、不満を与えないよう配慮する必要があります。

戦略的に多様な採用手法をとる

優秀なデジタル人材は希少で需要が高いことから、従来のような「待ちの募集」での採用は非常に困難です。

  • SNSを使った採用活動
  • 従業員や関係者からの紹介(リファラル採用)
  • 求職者への積極的なアプローチ(ダイレクトリクルーティング)

上記のような採用はコストが抑えられるうえに、まだ転職の意思が薄い転職潜在層にもアプローチできます。日頃からの従業員への声かけや、SNSでの発信が重要です。

デジタル人材は情報の感度が高い人材が多いため、自社からの積極的な発信やアプローチに敏感に反応する可能性があります。自社が求める人材に的確にアプローチするには、上位のような活動を軸に綿密に戦略を立て、社をあげて実行しましょう。

また、せっかく採用してもすぐに転職してしまっては元も子もないので、社内での育成や処遇の整備の充実を徹底しましょう。

DX推進は採用や育成だけでは進まない

企業にとってデジタル人材の採用・育成はもちろん重要ですが、DX推進を目標と掲げるなら、採用や育成だけでは不十分です。企業がDXを推進するためには、以下の取り組みが必要です。

  • 経営層の参画
  • 適正なシステムの導入
  • DXを推進できる人材の確保

順番に解説します。

経営層の参画

まずは経営層がDXの重要性・必要性を理解して、トップ層全体が一丸となってDXを促進することが不可欠です。DX推進には大規模な投資や、経営戦略・ビジネスモデル全体の見直しが必要なケースもあります。

経営層がDXによって成し遂げたいビジョンを明確に示し、会社全体を巻き込んで推進しなければなりません。また、DXは中長期的な計画をもとに推進するので、3~5年後を見据えたビジョンを掲げるようにしましょう。

適切なシステムの導入

DXを効果的に推進するためには、ツールの導入が必要です。現在の日本企業の多くは「レガシーシステム」と呼ばれる老朽化した基幹システムを使用しているケースが散見されます。既存のシステムから脱却し、新たなシステムを構築したうえで自社に適したツールを導入しましょう。

また、導入するツールが社内のルールやめざすビジョンに合わなければ、良いツールを導入しても効果を十分に発揮できません。まずは、めざす目標を実現するために、どのツールが必要か検討しましょう。

ツールにはそれぞれ特化した分野があり、料金体系もさまざまです。自社のニーズに合ったツールを入念に選ぶ必要があります。また、従業員にとって活用しやすいことも重要です。

DXを推進できる人材の確保

DX人材を確保できれば、スムーズな推進が可能です。一般的な採用以外にも、外部からのアウトソーシングやスカウト、自社でデジタル人材をDX人材として育てる方法もあります。

外部からの人材確保は、DX人材に特化した求人紹介サービスの利用が効果的です。また、既存の社員は自社の業務や環境を、十分に理解しているでしょう。社内人材の育成は、育て方次第で十分な活躍が期待できます。

デジタル人材として転職するには?

デジタル人材は業界を問わず引っ張りだこの状態であり、経験があれば転職自体は困らないでしょう。まったくの未経験からデジタル人材として転職をめざすなら、前述したプログラミングやデータ分析といったハードスキル、課題解決力や論理的思考力などのソフトスキルの習得が求められます。

プログラミングやアプリ開発などは、東京都が求職者向けに実施する「デジタル人材育成支援事業」を活用する方法があります。また、デジタル技術の習得だけでなく、未経験からDX人材をめざすなら、DX人材専門の求人紹介サービス「Resource Cloud HR」による学習支援も効果的です。

求人紹介が主な事業なので、成長が見られれば企業の紹介も可能です。さらには、未経験の方だけでなく、デジタル人材としてすでに活躍しており「もっとキャリアアップがしたい」と考えている方にも「Resource Cloud HR」による求人紹介をおすすめします。

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デジタル人材・DX人材として活躍してみませんか?

デジタル人材やDX人材は今後ますます必要になることが予想されていますが、現状、人材の不足が急速に解消される見込みはなく、深刻な問題へと発展しつつあります。デジタル人材としてのスキルを身につければ採用市場での価値は向上し、より良い条件での就業も見込まれるでしょう。

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また、DX人材について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

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