昨今の日本企業においてDXの推進は急務ですが、DXが思うように進んでいない原因のひとつに、DXを推し進められる人材の不足が挙げられます。DX人材は外部からの採用以外にも自社で育成する方法もあり、自社の業務や状況を十分に理解したDX人材として、活躍できる可能性が大いにあります。
本記事ではDX人材を育成する方法や、育成によって職種別に伸ばすべきスキル、DX人材育成で失敗しないためのポイントなどをまとめました。
DX人材を採用したいけど応募がこない、社員をDX人材として育て、自社のDXを推し進めたい、そういった悩みをもつ方はぜひ参考にしてください。
DXとは?
DX(Digital Transformation)とは、IT技術の活用により企業の売上・利益を向上させるだけでなく、デジタル技術を普及させることで、社会や人々の暮らしをより良くする変革のことです。
2018年に経済産業省が以下のようにDXを定義し、重要性を訴えたことで、日本でもDXが注目されるようになりました。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
(出典:経済産業省「DX 推進指標」とそのガイダンス 令和元年7月)
DX推進は企業のみならず、社会や市場にとっても重要な取り組みです。そして、DXをスムーズに進めるためには、「DX人材」を育てるべきです。
DXについての詳細はこちらの記事もご確認ください。
DX人材とは?
DX人材の育成について解説する前に、まずはDX人材への理解を深めるために、DX人材の定義や混同されやすいデジタル人材との違い、DX人材の育成が求められている背景と現状をお伝えします。
DX人材の定義
DX人材の明確な定義はありませんが、デジタル技術の活用により、企業や社会に変革をもたらす人材を指すのが一般的です。エンジニアリングやプログラミングといったIT技術をもつだけでなく、DXを正しく理解したうえで企業・業界の課題を発見し、デジタルスキルによって解決に導く能力が求められます。
また、経済産業省は『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』 (DX 推進ガイドライン)にて、DX推進には以下のような人材を確保すべきと記しています。
- DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
- 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取組をリードする人材、その実行を担っていく人材
※ 人材の確保には、社外からの人材の獲得や社外との連携も含む(出典:経済産業省『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン』 (DX 推進ガイドライン))
DX人材とデジタル人材との違い
DX人材とデジタル人材の違いについては、株式会社NTTデータ経営研究所のレポートを参考にすると、以下のように定められます。
- デジタル技術と呼ばれる先端技術
(ビッグデータ分析・人工知能技術・ブロックチェーン技術など)
- DX施策として取り上げられることの多いサービス・プロダクト
(サービスのオンライン化・RPA・IoT危機を活用したサービスなど)
- DX推進に有効な手法・方法論
(UXデザイン・アジャイル開発・PoC実施など)
デジタル人材は、以上のいずれか1つでも、社内外から認められるレベルの人材を指します。
(参照:株式会社NTTデータ経営研究所『「デジタル人材定着に向けたアンケート調査」デジタル人材の定着には、上司の選定とワークライフバランスの推進が重要~多様化するデジタル人材の活用に向けて~』)
前述のとおり、DX人材はあらゆるデジタル技術をビジネスに活用し、課題を発見・解決できる人材のことです。つまり、デジタル人材としてのスキルを身につけたうえで、その他のスキルやビジネスの視点を養った人材が、DX人材といえます。
DX人材の育成が求められる背景と現状
DX人材の育成が進まなければ、企業のDX推進が滞ることは避けられません。そもそもDX推進が急務であると騒がれている背景には、「2025年の崖」という問題があります。
経済産業省の「DXレポート~ ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では、2025年までに国内の企業がDXを推進できなかった場合に、以下のリスクがあるとしています。
- 市場の変化に合わせてビジネスモデルを柔軟に切り替えられず、デジタル競争の敗者になる
- システムの老朽化・複雑化により維持管理費が高額になる
- システム保守運用の担い手不足により、サイバーセキュリティの事故・情報データの喪失リスクが高まる
- 多くの日本企業がDX推進に遅れを取ることは経済にも影響を与え、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生まれる恐れがある
現代において、テクノロジーは常に発展しており、同時にデータ活用の重要性も日々増しています。今後、市場に取り残されないためには、新たなデジタル技術の活用が必須です。
そして、DX推進が遅れている原因のひとつに、DX人材の不足が挙げられます。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は、上場企業1,000社を対象に、DXに関するアンケートを行いました。そのなかで、DX人材に対する不足感を感じている企業は、全体の8~9割にのぼりました。
(参照:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「これからの人材のスキル変革を考える ~DX時代を迎えて~」)
デジタル技術は日々進歩しているなか、DX人材の不足は早々に解消される見込みはありません。加えて、ベテラン技術者の高齢化も進んでおり、需要と供給のギャップのさらなる拡大が今後も予想されます。
DX人材を育成すべき6つの職種
DX人材を大きく分けると、以下の6つの職種に分類できます。DX人材を自社で育成する場合、それぞれの人材がもつスキルや適性をみて、どの職種を任せるか決めたうえで育成方法を定めましょう。本項では職種別に、主な業務内容と求められるスキル、教育方針の例を紹介します。
- ビジネスプロデューサー
- ビジネスデザイナー
- アーキテクト
- データサイエンティスト/AIエンジニア
- UI/UXデザイナー
- エンジニア/プログラマー
ビジネスプロデューサー
ビジネスプロデューサーは、DXやデジタルビジネスの実現に向けて、組織を導くリーダーとなる人材です。デジタル技術だけでなく、ステークホルダーとの良好な関係の構築や、自社の取るべき経営戦略・方針まで理解したうえで組織を導く能力が求められます。
経営層の人物がCDO(最高デジタル責任者)として、ビジネスプロデューサーの役割を担う場合もあります。育成の際には、経営層の人物がメンターとして、経営判断能力やリーダーシップを直々に伝えると良いでしょう。
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進などを行う職種です。市場のニーズや課題を把握し、どのようにビジネスにつなげるかを考えます。
生み出したアイデアを経営層に提案し、社内外と連携するスキルが求められます。実務や研修などを通して、企画力・発想力・ファシリテーション能力を伸ばすことが重要です。
アーキテクト
アーキテクトは、DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計します。プロジェクトに必要なデジタル技術を具体的に定め、実装や構築にいたるまでのプロセスを担います。現状の課題の分析から得たアイデアをもとに、システムの開発・統計に活用するスキルが必要です。
デジタル技術はもちろん、新システムを構築するための発想力やビジネスの視点も求められます。システム管理を任せながら、新たな視点や発想力を養うと良いでしょう。
データサイエンティスト/AIエンジニア
データサイエンティスト・AIエンジニアは、DXに関するデジタル技術(AI・IoTなど)や、データ解析に精通した人材です。ビジネスプロセスのなかで、ビッグデータやAIをビジネスに活用するスキルが求められます。技術的なデジタルスキルだけでなく、ビジネススキルの入念な教育が必要です。
UI/UXデザイナー
UI/UXデザインデザイナーは、DXやデジタルビジネスに関するシステムの、ユーザー向けデザインを担当する人材です。UXデザイナーが担うデザインは、見た目の美しさだけでなく操作画面の使用感や利便性といった、ユーザー体験の構築が求められます。Webデザインやサイト設計だけでなく、エンジニアとの密なコミュニケーションを通して、デザインを最適化していく能力が必要です。
日頃からあらゆるWebデザインに触れさせ、社内外の優秀なUI/UXデザイナーとの接点をもたせることが効果的です。
エンジニア/プログラマ
エンジニアやプログラマは、上記以外のデジタルシステムの実装や、インフラ構築などを担います。DX人材におけるエンジニア/プログラマは店舗や製造現場などのデジタルシステムを扱うケースも多く、ソフトウェアだけでなくハードウェアまで含めた幅広い知識が必要です。
座学やOJTなど、基本的な育成方法によりスキルを伸ばすと良いでしょう。
DX人材の育成方法とは?
DX人材を社内で育成する具体的な方法と、DX人材が身につけるべき知識・スキル・マインドセットを紹介します。
DX人材の具体的な育成方法
代表的なDX人材の育成方法は、以下の3つです。順番に解説します。
- 座学
- OJT
- 社内外でのネットワークを構築
座学
将来的にDX人材として登用する可能性がある人材に対して、基本的な知識・技能を習得させたり、より実践的な施策の企画・評価を学ばせたり、受講者のスキルに合わせた研修が実施できます。
社内での自社の環境に合わせた内容の勉強会や、外部講師を招いての講義などが有効です。座学の場合は当事者意識をもって取り組めるよう、ワークショップや実践的な内容にすると良いでしょう。
OJT
座学で学んだ内容を実践するには、OJTでの訓練が効果的です。社内で小さなプロジェクトを立ち上げ、実行力や企画力、課題発見力を養いましょう。実践による知識・スキルの定着が見込めるだけでなく、早くから成功体験を積ませることで、モチベーションの向上が期待できます。
社内外でのネットワーク構築
日々新しい技術やサービスが生まれている現代において、DX人材として活躍するためには、常に情報をアップデートする必要があります。そのためには、社内外のネットワークを構築しましょう。社内で情報交換できるコミュニティづくりや、社外の優秀な人物と接点をもたせるのも効果的です。
DX人材に求められる知識・スキル・マインドセット
DX人材に求められる知識・スキル・マインドセットについて、項目別に以下のようにまとめました。育成の際の指標にしてください。
知識
- DXおよび関連領域の知識
- 最新デジタル技術の知識
- ビジネスに関する知識
- 幅広い業界や業種に対する理解
スキル
- IoT・AI活用のスキル
- コミュニケーション能力
- 環境の変化に柔軟に対応する能力
- ものごとをデータでとらえて語る能力
- 自分の役割を明確にし、状況に応じて周りを巻き込む力
マインドセット
- 高い理想をもちつつ、着実に実行できる堅実さ
- あらゆる情報を連携させながら事業を行う視点
- 正しいかわからなくても業務を推し進める熱意
- 常に新しい知識を習得し、課題にチャレンジし続ける姿勢
DX人材育成を成功に導くためのポイント
本項では、DX人材の社内育成を成功させるためのポイントをまとめました。DX人材育成に携わる方は、以下の3点を意識しましょう。
- DX人材に必要なのはITスキルだけではない
- 知識や情報を常にアップデートする必要がある
- 長期的な視点で育成する
DX人材に必要なのはITスキルだけではない
本記事では何度も触れていますが、DX人材にはITスキル以外にも、ビジネスの視点やコミュニケーション能力など、あらゆるスキル・知識が求められます。
DX人材に求められるのはデジタル化の先の変革であり、そのためには変化に対する柔軟な対応や発想力、ほかの従業員の協力を得るための巻き込み力などが不可欠です。
知識や情報を常にアップデートする必要がある
デジタル領域は変化が激しく、常に情報をアップデートする必要があります。ただ単に知識を詰め込むというよりも、時代の変化を敏感に察知し、能動的に新しい知識や技術を取り入れることが重要です。
日々の情報収集だけでなく、社内外のコミュニティに属し、企業の事例や最新のデジタル関連の話題を共有できるようにしておくと効果的です。
長期的な視点で育成する
短期的な教育では、DX人材の十分な育成は見込めません。DX自体、実現までに3~5年はかかるとされており、長期的な目線での取り組みが不可欠です。DX人材の育成に関しても、これまでになかったような変革を生み出すためにどういった取り組みが必要なのか、DXでどのようなことを実現したいのか、どの職種の人材がどの程度必要なのかを、事前に明確に定める必要があります。
DXに関する知識やスキルがまったくない社員を長期的に育成するのが困難なら、活かせそうなスキルをもつ人材の中途採用や、外部の人材を確保する方法もあります。
DX人材は採用でも獲得できる
必ずしもDX人材は社内で育成しなければいけない訳ではありません。近年のDX人材の需要急増により、DX人材の確保は簡単ではありませんが、DX人材を外部から確保する方法は、以下のものが考えられます。
- 一般的な採用活動
- アウトソーシング
- 競合他社からのスカウト など
こちらの記事では、DX人材を採用する際のポイントをまとめています。参考にしてください。
また、外部からDX人材を確保するなら、次項で紹介するDX人材に特化した求人紹介サービスの活用が有効です。
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効果的なDX推進にはDX人材の確保が必須
企業が今後も事業を永く続けていくためには、DX推進は避けて通れません。しかし、頼れ
るDX人材や精通したコンサルタントなどがいなければ、何から着手すれば良いのかわからない、という企業が多いのも事実です。
DXの必要性を感じているなら、一度Resource Cloud HRにお気軽にご相談ください。人材の紹介だけでなく、人材育成に関するご相談も承ります。
DX人材についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。